2005年の入試が終わった。
君との授業も終わった。
君がこんなに大きくなるとは。
君がこんなにかっこいい奴とは。
Bグループが第1志望校で、今年はBグループから。
君の点数が気になって、気になって。
電話をした。
君は、いつにもまして明るかった。明るく振舞っていた。
君の得意科目は英語。満点狙い。
「先生、聞いて聞いて。英語14点。」
受話器から笑顔がこぼれていた。
この電話までも、君はなぜがんばるの?
なんてことだ。心で叫ぶ。
それから、
「先生、聞いて聞いて。理科はもっとやっちゃった。10点。笑っちゃうらー。」
何も笑えないよ。何も。涙をこらえた。
志望校への望みが遠ざかる船のようにどんどん消えていく。
笑顔の電話に、笑顔で
「なにやってんだ。」と答えた。他に言葉が見つからなかった。
君の精一杯の、やせがまんの、こみ上げる悔しさをひた隠す
笑顔の電話に、自分も。
そして、Aグループ前日最後の授業。
「明日が第1志望であろうとなかろうと、
明日は中学校生活を締めくくる最後のテストだ。
そこで、自己ベストを出そう。自分のためにやって来い。最後のテストで
決めて来い!」
君に伝えたかった。塾講師になって、このようなことを言ったのは2度目だ。
Aグループの入試が終わった。
君は会心の結果を残した。
君は最後に決めた。
君も逆だったらよかったのに、なんて微塵も言わなかった。
10年前に教えた真名美のように。
太陽の光が木にふりそそぐ。
時には木に雪がふりつもる。
冷たい雨のときだってあるさ。
でも、
木に風がふりそそぐよ。
木にあたたかい風が。
木にそよ風がふりそそぐよ。
そうして、楓(かえで)となる。
楓という落葉高木は5月ごろ、小花をつけ、後に
2枚の翼を持った果実をつけるらしい。
そう、君も翼を広げ、夢という果実をいつか
いつの日か、実らせるだろう。
笑顔といっしょに。
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